ksの雑記

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コンパウンド用のインドア矢について考える

 

どうもksです。

 

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これからインドアのシーズンなのでインドア矢について書いていこうと思います。

ちなみに例の如くコンパウンド向けの記事なのでリカーブではあまり役に立たないと思います。

そして万人に当てはまる記事ではないかもしれません...。

 

これからの「スパイン」の話をしよう

まずスパインって何でしょう?

一言でいうと「ある一定の重さをかけた時にどれぐらいシャフトがたわむか」を数値で表したのがスパインです。たわんだ量が0.5インチだったとき、そのシャフトのスパインは500になります。

 

スパイン計測の基準にはATA(米国アーチェリー貿易協会)とASTM(米国材料試験協会)の2種類があります。

  • ATA式:26インチ間隔に配置した台にシャフトを載せ、中心部に2ポンド(907グラム)の重さを掛けた時のたわみ量
  • ASTM式*1:28インチ間隔に配置した台にシャフトを載せ、中心部に1.94ポンド(880グラム)の重さを掛けた時のたわみ量

 

天下のイーストンのドキュメントでは以下のようにASTM式を用いてスパイン計測をしている文言(?)がありました。

・原文

The spine rating of an arrow is simply a measurement of its stiffness. The same Easton arrow comes in a variety of stiffness: the lower the number, the stiffer the arrow. For example, a 330 arrow is stiffer than a 500 spine arrow. There are two kinds of spine (stick with us, we promise not to get too technical). There’s static spine, which is how an arrow reacts when an 880-gram (1.94 lbs.) weight is suspended from the center of the arrow. The arrow must be 29” in length and supported by two points, which are 28” apart. The number of inches the arrow deflects or bends X 1000 due to the weight is the spine size or measurement of an arrow. So, a 500 arrow bends .5-inches when the weight is applied.

・日本語訳

矢のシャフトの評価は、その硬さを簡単に測定したものです。同じイーストンの矢でも、様々な硬さがあります。例えば、330番の矢は500番のスパインの矢よりも硬いです。スパインには2種類の種類があります(技術的な話はしないことをお約束します)。1つは、880グラム(1.94ポンド)の重りを矢の中心から吊るしたときに矢がどのように反応するかを示す静的スパインです。矢の長さは29インチで、28インチ離れた2つの点で支えられていなければなりません。重りによって矢がたわんだ量、または曲がった量×1000が矢のシャフトの大きさまたは測定値です。したがって、500番の矢は重りがかかると0.5インチ曲がります。

MAKING SENSE OF ARROW SPINE (EASTON ARCHERY)

 

参考記事:

How do you convert ATA to ASTM arrow spine measurements? (TargetCrazy.com)

What exactly does ‘spine’ mean (Bow International)

WHAT’S ARROW SPINE? (Archery 360)

 まぁネットでちょろっと調べただけなので各シャフトメーカーがどちらの基準を用いているかまでは分かりませんでした。(スパインについて調べたら2種類の計測法が出てきて焦りました。知らんわこんなの...。)

 

 ここからの話は「各メーカーのスパインチャートに従って矢を作ればとりあえず大丈夫っしょ」って感じの前提で進めます(スパインチャートに従う限り2つの計測法の違いは無視する)。

 

スパインはどのようにして決まるか

つまりたわみ量はどのようにして決まるかって話です。

簡潔に言えば「シャフト内径」と「シャフト厚」の2つで決まります。(材質に関しては触れません。詳しくわからないので。)

あるシャフトを製造するとき、長さを変えずにさらに硬くしたい場合はシャフト外径を太くするか、シャフトを厚くすればよいのです。細い棒より太い棒のほうが曲がりにくいってことですね、多分。

 

多くのオールカーボンシャフトの場合、スパインが硬くなるにつれて外径が増していきます。(内径を変えると複数のポイントを用意する必要があるので手間がかかる)

アルミシャフトの場合、スパインが硬くなるにつれて内径と厚みが増していきます。

イーストンではアルミシャフトのスパインはシャフト外径(○○/64インチ)+シャフト厚(○○/1000インチ)で表されます。

例えば2315のシャフトは23/64インチの外径で15/1000インチの厚みのスペックということになります。

 

 

インドアで有利な矢とは?

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リカーブではこの問いに対する答えはないと思います。かのエリソンは、時にX10を使い世界記録を樹立し、時にはX7を使ってリカーブ初の900Club入りを果たしています。(ベガスルールも関係してますが...)

しかし、インドアにおいて10点が圧倒的に小さいコンパウンドの世界ではラインカットを追求したほうが確実に有利です。誰もX10を使ってWA18mラウンドを射ちたいとは思わないでしょう。

 

極論ではありますが、以下のような観点からコンパウンドはインドアにおいてパラドックスの収まりを多少犠牲にしても直径の太いシャフトを選択したほうが有利、とも考えられます。

  1. 近距離を射つのでサイトが多少下がっても問題ない。
  2. 室内では風が吹かないのでインドア用の大きなベインで修正力を高めることができる。

1.に関して詳しく言えば、スパイン合わせのために長いシャフトや重いポイントを積むことができるということです。

 

できるだけ太い矢を使うということ

スパイン選定

インドア用オールカーボンシャフトを製造するとき、メーカーは最も硬いスパインがWAルール上限(9.3mm≒23/64インチ)を超えないように設計します。太いシャフトほどスパインが硬くなるので当然ではあります。

限界までラインカットを狙うのであれば選択したシャフトで、できるだけ硬いスパイン(アルミシャフトであればルール上限の23径)を選択すればシャフト直径を活かすことができます。

つまり、普段とはチャート表の見方を変え「ピークポンドとアローレングスからスパインを求める」のではなく、「スパインとピークポンドからアローレングス」を求めるということになります。

 

シャフト長の選定

前述の通り、インドアではスパイン合わせのために極端に長いシャフトを使ってもアウトドアほどの悪影響はないです。しかしドローレングスに対して長すぎるシャフトを使うとグルーピングの悪化を招き、ミスに対してシビアになる傾向があります。それらの事を考慮すると、シャフトのみの長さでドローレングス+5インチぐらいが限度かなと考えています。(ポイント重量やピークポンドなどが関係するので具体的な数値は言えませんが...)

グルーピングの問題に関してはポイント重量の設定である程度解決することもできます。

 

ポイントの選定

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ポイントはアウトドアよりも重いポイントを装着します。ポイントを重くすることで発射された後の動的スパイン*2を柔らかくすることができます。

イーストンやカーボンエキスプレスからは接着後もノック側から長いレンチで追加ウエイトを装着可能なアジャスタブルポイントが販売されています。それらの商品を使って自らの適正ポイント重量を調べ、グルーピングが落ち着く場所を探ることも一つの手です。

ただし、ある一定の重さを超えるとグルーピングが狭まらなくなり、サイトが落ちていくだけになるので注意が必要です。

 

スパイン選定とポイント重量の選定は互いに影響し合う要素なので、一体的に考えなければいけません。

 

ベインを貼る

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左ピッチ(左回転)のベイン

 

ベインもストレートではなく、ピッチを付けたりヘリカルクランプを使って貼ると修正力をさらに高めることができます。

この時注意しなければならないのは、ベアシャフトの回転とベインのピッチ方向を合わせなければならない点です。(※回転方向は必ずしも利き手に依存する訳ではありません。)

ベアシャフトが完成したら実際に射ってみてどの方向に回転するか確認します。

まず的前から1~2mぐらい位置でベアシャフトを射ち、畳に刺さっているシャフトのノックまたは印刷の向きを確認します。そして50cmずつぐらい後退しつつベアシャフトを射ち、同じように畳に刺さった矢を確認します。

この方法でベアシャフトが発射された後、どのように回転しているかをコマ送りのように観察することができます。

右回りをしているのであれば右ピッチ(フィルムベインであれば右用)を貼り、左回りであれば左ピッチで貼ります。

逆向きの羽を貼ると発射直後に不審な挙動をするので、間違えていた場合はそれで気づくかもしれません。(私は経験済みです...)

 

参考動画

 

その他に

レストを限界まで的側に詰めるのもアリです。トルクチューニング?そんなものは知りません。レストブレードからノッキングポイントまでの距離を広げることで、初動のたわみ量を増やすことができるので、結果として(無理やり)動的スパインが柔らかくできます。


 

まとめ

個人的にはアウトドア矢よりインドア矢の選定・製作の方が難しいと思います。

 

今回紹介した方法はセオリーから逸脱していて多少乱暴な考え方ですが、場合によっては必要になることがあります。

例としてスパインによってシャフト直径が極端に細くなる場合です。

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画像はカーボンエキスプレスのX-BUSTERのスペック表です。500番と600番の直径(DIAMETER)に注目してください。400→500番の時0.002インチ(0.05mm)の差ですが、500→600番では0.029インチ(0.7mm)も差があります。

パラドクスの収まりを求め600番で矢を製作した場合、500番を選択した時よりもラインカットで圧倒的に不利になります。

これはあくまで一例ですが、シャフトによってはこのようにスパインによって極端に直径が変わることがあります。

 

今回はラインタッチに重きを置いた内容になっています。今までに的前で数mmの差から点数を落とす苦い経験をした方もいると思います。紹介した方法を使えば「もう少し太い矢を使ってれば...!」と思わずに済むかもしれません。

 

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参考動画(Janine Meissner選手に注目です!)

youtu.be

 

 

*1:ASTM F2031 - 05(2014) Standard Test Method for Measurement of Arrow Shaft Static Spine (Stiffness) (ASTM International)

*2:ポイント重量、シャフト長、ベインなどの矢の各要素と弓の実質スペックを考慮し実際に発射した時の矢の挙動を含めたスパインを指す